烏羽の表

日本書紀 巻第二十

  敏達天皇 亭中倉太珠敷天皇

 五月一日、天皇は皇子(彦人大兄皇子か)と大臣との尋ねられて、「高麗(高句麗)の使い(前年、越の海岸に漂着した)はいまは何処にいるか」といわれた。大臣はお答えして、「相楽(京都府相楽郡)に館を頂いております」といった。天皇はお聞きになってたいへん痛ましく思われた。悲しみに心動かされて歎かれ、「悲しいことだ。この使人らは、すでに名前を先帝(欽明天皇)に申し上げてあるのに」といわれた。群臣を相楽の館に遣わして、もたらした調物を検べ、記録して京へ送らせられた。